そのいでたちして 人にも似ぬものもなく されどその髪の色はあかあかと 人の肉の色にも似て いつより生まれて いつよりその身を落とした それは何れも内より出でたもの 血の味を覚えて 深山は深く 大江山に あれらが居所となり わたるたづきも絶えてなお この身よ 生きねばならぬ 何に替えようと いかないかな兵つわものとて 人の子なれば 皆同じことよ 鬼の居ぬ間にその心 砕け いずこへいざなわれるのか にどとうきよにかえれぬか あなかま 口を噤め その腕のあって尚 人情ひとのこころあるものを失わず そのなりわいして けして人には似ぬこと ならばそのわざ照らすはあおあおと 人の魂の色にも似て その昔には 人に畏れられては されどいつしか人の手にかかって あああの鋼の音 あれなるは遠く 羅城門に 今宵の愚かしきもの わたるたづきを得てもなお この身は生きねばいけぬ 何に替えねば いかないかな理さえ 人の子なれば 皆同じことよ 鬼の居ぬ間はこの心 力け(うごけ) いずこへといざなうものぞ ひとをくらうがさだめなり あなかま 口を噤め その腕の痛みして 人情ひとのこころあるものを失わず 人はみな そのこころのうちなる鬼をみて 恐れおののく 鬼はみな そのこころのうちなる人をみて されども人に戻れず いかないかな物語も 鬼の子なれば 皆同じことよ 人の居ぬ間に討たれなん 風け(ひびけ) いずこへといずこなれども このあるところ天の道 あなかま 口を噤め その腕を戻しても 人情(ひとのこころ)あるものを 失わぬよう 斃せ 鬼の声を 未だ続く鬼退治 人情(ひとのこころ)あるものを 失わぬよう
