ああ 三日月も汗ばむような 熱帯夜に 絹のようになめらかな暗闇に 身をつつんだ黒猫 眼を光らせて 夜の屋根をつたって 君にしのびこむよ 胸のとびら真夜中にひらかれて 闇のむこう遠く耳を傾ける 鳥が羽ばたき去った 後の静けさのよう 夏の闇にひろがる 音のないノクターン 夜のはざまに生まれるいくつもの夢 ほどけてく花のつぼみ ルビーのような露のせて 夜明けを待つよ 夜のはざまに生まれるいくつもの夢 夜の吐息と呟き 育ついくつもの明日 夜明けを待つよ ああ 三日月も氷るような夜明け前 絹のようになめらかな暗闇に 身を包んだ黒猫 君のそばを離れて 夜明けの屋根をつたい 醒めそうな夢の中 ひとつずつ消えてゆく 遠い星屑になり 姿を消したのさ