風の音(と)の遠き 古(いにしえ)の咎(とが)よ 今は結ぼほる みずちの玉か 木(こ)の暮れの闇に 潜みて存(ながら)へば 此処(ここ)ながら黄泉(よも)つ 獄となりぬる 幽(かそ)けし 人の心ばへ 交(まじ)ろふ 鬼のささめき 朽ち残る骨は 何ぞ白き色や 野晒(のざら)しとなりて なほ薄笑(うすわら)う 幽けし 人の心ばへ 交ろふ 鬼のささめき 底ひなき 常闇(とこやみ)に落つ 血染まる 衣(きぬ)を纏(まと)ひて 我はさも 鬼魅(きみ)となりけり 血を啜(すす)り 肉を喰らふ 我はさも 鬼魅となりけり 血戯(ちそば)へて 爪(つま)を掲(かか)ぐ あれほど見てはならぬと申したに、 とうとうこの姿を見られてしもうた あなた様も この婆とかかづろうたのが 運の尽きと諦めなさるがええ いかにも累々(るいるい)と積もる 白骨(しらぼね)は 私の喰ろうた人のなれの果て 私も昔は若く美しゅうございました 背負い切れぬ程の業罪(ごうざい)が 私を鬼にしたのでございます いつしか口は裂け 顔は醜く歪(ゆが)み 髪はみすぼらしい 白髪になり果てました 一夜の宿をと訪ね来た旅人の喉笛に 爪を立て血を啜(すす)り 其(そ)の肉を喰ろうて 今日まで 生きながらえたのでございます 何故このような業を背負うたか それは私が死んだ我が子を 喰ろうてしもうたからです