地下鉄のドアがあき 押し出されて 一人歩き 街の灯を 集めている 背の高いマンションの 窓越しに見えてる 夜のぼやけた 輪郭 そして カカトを踏んだスニーカー ブカブカのパジャマが おきざりのままで 眠れぬ時は 楽しかったことを 考えるんだと あなた いつも言ってた 夏の陽がもれていた 穴のあいた麦わら 落書きだらけの カレンダー そして 笑いころげた午後と 早起きの散歩道 おきざりのままで 人ゴミの中もまれて ふいにバッグが落ちて 散らばったまま じっと動けない 失うために 二人したことなど 何もなかったはずだと 解っている 音もなく揺れている 白い鳥のモビール 真夜中の まちがい電話 そして 冷たいドアのノブと 広すぎる部屋だけ おきざりのままで