紅(くれない)ひとひら 風に揺られて落ちた 祝いの花か 死花花(しかばな)か 産着は帷子(かたびら) とうに野火手(のぼて)は落ちて 常世(とこよ)に生まれて 寂しかろ 梢(こずえ)に枝に 稚児(ややこ)は実る 渡る夜風に 揺られて睡(ねむ)る 母喰鳥(ははくいどり)が ひとつ唱(うた)えば夜更け 朝風吹くまで ねんねしな 此の枝を閨(ねや)に 青葉を包(くる)みに 母の腕(かいな)を 知らぬ儘(まま) 薄紅色の 頬に一滴(ひとしずく) 夜露は 魄(たま)を悼む涙 時告鳥(ときつげどり)が ひとつ唱(うた)えば夜明け 朝影(あさかげ)射すまで ねんねしな まだ戸は開(あ)かぬ