目を凝らしたらまだ見えるはず 遥か抽象の夜空 それが何かも分からないまま 北を指し示している光 耳を澄ましたら聞こえるだろう 風が吹き荒れる兆候 閉じた窓を震わせている 遠く波が砕け散る音が 特に意味は無くて 誰にも言わないで 規制線を踏み越えて 何故かここまで来た 崩れた道路の先 切り立った崖の上 黒い海のふちで ひとりこうして叫んでいる 春を待ってただ彷徨っていた 波欠けの白昼夢 何か大事なものを失った その喪失が私を象る 朝を待って詩を書いていた 風に邪魔されながら ただ一つ手に入れていた 君が見つけてくれた、光 上手く眠れなくて 焦りばかり募って あてもなく走って いつの間にか立っていた 昨日降った新雪は 暁光を孕んでいる 赤く照った空を見て 作った歌でも歌おう 鉄弦を弾けば 喉を鳴らせば 現世は揺らいでいずれ 君の胸に届くだろう