音なき世界に 鏡の向こうに 君は居た―― 闇夜に溺れる森は青く 冷たい土から雨が薫る 名前がない石の墓標に跪く少年 翠の王国(くに)から出られずとも 心を自由に飛ばせばいい 崩れかけた天使(エムロ)の像が その祈りに呼び掛ける Ar zel sug rin mil. (あなたの想う過去と未来) 片羽を Tu o nen sinal. (それは真実ではない) 失くした痛みに耐えた 幾度めかの朝でも 贖罪からは逃げられない あの日 白い花嫁衣装(ドレス)で去った 少女 手のひらに残した言葉は さよなら――ただそれだけの文字 永別の呪文のようで 音なき森へと導かれて 居るはずのない人を探す 記憶の濁る水溜まりで見つけた 紅い眼をした『少女(きみ)』を 本当の世界が視えなくても 心に明かりを灯せばいい 落日にも魂(いのち)は宿る そんな詩を信じていた Ar zel sef rin ield. (あなたの知る光と闇) 現実は Tu o nen sinal. (それは真実ではない) 光の射す町でさえ暗い影が蔓延り 希望の星は何処にもない あの日 何も出来ずに立ち尽くして 全て失った後悔は 震えていた拳の中の 金貨より価値があるだろう 音なき森から聞こえるのは 静寂を掻き消す追憶 月に輝く水鏡が 『少女』の正体を映した ――もしも僕が夢から覚める時は ――幻想と共に壊れよう 瞼を閉じそっと呟く 契約の呪文のように 音なき森へと迷い込んで 枯れた木に寄りかかる姿 全て見透かす蒼い花は抱いた 紅い眼をした『少年(きみ)』を