若い頃は、声楽宗教曲が大の苦手だった。友人は毎日のようにマタイ受難曲を聴いていて、真夏のクルマのなかまで受難曲が鳴り響いていたのには閉口したものだ。しかし、音楽というものは摩訶不思議なもので、ある日あるとき、突然のようにすべてがすんなりと入ってくる。何を聴いても心穏やかに聴きいることができるようになる。信仰心などとは無関係に、純粋な音楽として入ってくる。驚くばかり。いまでは毎日聴いている。カンタータやオラトリオ、ミサ曲などには明るい曲調から暗い曲調まで千数百曲はある。ここでは、ランダムに選んだカンタータの間に、バッハの最高傑作にして人類の珠玉ともいえる「ミサ曲ロ短調」をはさんでみた。お聴きあれ。
…もっと見る