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説明文

“ 背広の背中 ” 父は必ず僕よりも早く起き 僕が起きる頃には テーブルについて 珈琲を飲みながら新聞を読んでいた テーブルの上には スクランブルエッグと もうすでに焼かれてあるトースト 彼は僕の顔を見ると 「おはよう」と一言 次に「食べよう」と続けた 彼はこの小さな町で 小さな本屋を一人で営んでいた 儲かる本屋じゃなく 俺の好みの本屋をやる そう言って 癌に倒れるまで 背広の背中でレジに座り続けた 彼は火曜日の定休日だけ 山屋に戻って穂高へ出かけていた 若い頃は冬山を単独登頂する 本格派だったが 僕が生まれて 母から冬山禁止令が発動され 僕の知る限りその約束を守り 一度も登頂していないと思う レース鳩を育成し 縁側で轆轤を回して陶磁器を作る そして時々ゴルフに出かけていた 母は僕を産んで 間もなく亡くなってしまったので 誰か特別な人はいたかもしれない けれどその影を 僕には微塵も見せなかった 僕に対しては放任主義で 僕への言葉はいつも お前の人生だ なんでも好きなように生きればいい 俺もそうしている 唯一反対したのは 潜水士になるときで 危険な仕事だから心配だと言った それでも最後は 好きにしたほうがいいと 一人呟くように頷いていた 父が亡くなって三十年が経つ 小綺麗にした背広にネクタイ姿 いつもそんな格好を していたわけではないのだが そんな父の後ろ姿ばかりを思い出す 父との会話の思い出はいつも スクランブルエッグと珈琲の匂い 好きなように生きる そしてそれには 誰かを、意思を、 守ることも含まれている 背広の背中と今も時々僕は 語らっているような感覚になったりする   “ 混ぜるな危険 ” 薄曇りの昼下がり ボケっとソファに寝転んで なんとなく 自分と向き合って考え事 完璧と正解 卵が先か鶏が先か? そもそもそんなものあるのか? 器用と不器用 器用は良い事に思えるが 不器用な方が愛される? 出る杭は打たれるとの関係は? 意地と拘り 吐いた唾は飲み込めぬ 天に唾を吐くようなもの 自分に縛りは必要か? 努力と熱中 嫌なこと出来ないこと それをするのが努力? そんなのしたくないな 好きな事 興味のある事に熱中したい 生きることは 汚れることか? 洗われていくことか? タブー やっちゃいけない 見てはいけない 知ってはならない それでも怖いもの見たさはある 願望の妄想 都合の良い世界を夢見る でもそこでのプライドを 現実の世界に 持ち込んでは駄目だよね 感情は気持ち良いけど 本質を見失って怖いと思う 儀式の意味 信じる心を試す場なのだろうか? まったく関係のない ネガティブとネガティブを 結びつけるのはヤバい 不幸の犯人探し 煉獄で生きるのは 精神的には苦痛でも 心的には楽なようにも思える 整理したい いや整理なんてする必要は無い? そもそもできない? インコのピロが囀っている そろそろ遊んであげる時間だな  
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