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  過ぎ去ってしまえば思い出は どんなものでも 映画のワンシーンみたいなものでしかない 言語化して アウトプットすると つくづくそう思ったりする。 “ あの日の見送り ” ウォン・パット空港の 有料パーキングに ハイラックスを駐車して 彼の重いトラベルバッグを 荷台から引きずり下ろした 彼はそれを肩に担ぎ上げ 「ここでいいよ」と一言 僕は、そんなこと言うなよって 「改札ゲートまで見送るよ」 彼も潜水技師で 僕と同じように少し特殊な 資格の取得を目指していた 数週間前 一緒に飯を食べようと誘われて 「もうあきらめる」って 故郷のバージニアに帰るという 「充分楽しんださ」って 笑顔で、「今日は奢るよ」って いやいやそれは 逆じゃないか?と僕は慌てた 思いを伝えると 「お前がいたから今までやれてた」 そう言って レシートを掴んでレジへ向かう 君はなんにも負けたんじゃないよ ちょっとだけ それが君より得意な奴が多かった それだけの話なんだよ 僕だって いつどうなるかわからない 年齢がもう、背中を押してる 「帰ってなにするんだよ」 僕は思わず口に出してしまう 彼は笑顔で 「親父が車の修理工場やっててさ」 そうなんだ、もう潜らないのか?と 僕が返すと 「趣味でレジャーダイバーの  インストラクターでもするよ」って なんかここに来て 数年間の思い出が頭の中で揺れて 思わず僕は俯いてしまう 彼は僕の肩を叩いて 「頑張れよ」って一言 僕は 「君は最高のバディだった」と一言 彼はポケットから エアチケットを取り出しながら ゲートに向かって歩き出す その向こうに旅立つ旅客機 その轟音がすべての音を掻き消して さみしさゆらゆら 夢破れてゆらゆら 彼の背中が少し先の自分に見えて 首を振って顔を上げ 身体検査を受けてる彼に手を振った  
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