グラスの中の完璧な嵐

遠くミシシッピーから遥々シェラネバダ山脈を越えてカリフォルニアへ。一攫千金の夢。破壊と建設。インディアンを蹴散らし棄てられた船材で出来上がる町。今じゃあらかた金も獲り尽くされゴールドラッシュの狂騒の余韻が残るのはここウィスキージャーの安酒場だけ。 夜をひさぐ女たちが嘆く。こんなはずじゃなかったと。 おまえが望んでいた平凡な暮しを吹き飛ばしてくれる嵐はもうとっくに止んじまったんだよ。変な夢など見ないで田舎に帰って優しい農夫と結婚することだな。明日の朝シャスタの船着き場まで送ってやるから今夜中に荷物をまとめておきな。まあその前にこのキツい酒を喉に流し込んで最後にこのファックなカリフォルニアの馬鹿馬鹿しい夢でも見ようや。