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説明文

昔、バイトでやってました。原稿を抱えて都会の街路樹の下を歩くのは、気持ちが浮き立つものです。自分には書く才能はなくても、こうして誰かの才気が刻まれた原稿をこの腕に抱えて歩く、もしくは自分のアイデアが加えられた原稿が印刷され、世にでることには興奮しました。ショーウィンドーに映る自分、通りを歩く人々を追い越してゆく自分や大通りを流れてゆく車、何か若いものだから自分だけが、この世の中を動かす最初のドミノのようになれる気がしていました。でも、、その大都会の往来を皆、何かしらの意志や意気をもってそれぞれ歩いて、それぞれの大門をくぐり、高速エレベーターに乗り、憧れの巨大なオフィスタワービルの大きなオフィスの小さなデスクに帰っていたのです。彼らに夕食を食べる暇も餌ですら与えられる時間を惜しまれるような働きをしていました。それを見ていると、自分には下働きをしていることに生きがいを感じる何かがあるんだろうと思えたのです。でも、それだけでは生きて行けないので、せめて家賃や食費がかからない地方都市の小さな町へと居を移したのです。もちろん、原稿を運ぶことも、街の往来からも外れて里と山の境にある、自分自身の生活を守る人々の暮らしを手伝う仕事を見つけたのです。
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