風の強い夜…
家路を急ぐみなを、ただ…ぼぉーっと見ていた。
コートの襟を立て速く歩く人の波を…
何も考えず…
どこに向かうのだろう…なんて、どうでもいいことを考えているなんて…
なんて、暇なんだろう…。
帰っても、誰も待つことのない部屋に…なかなか帰る気にもなれず。
暮れてゆく空を見ていた。
会社を出た頃は、まだ夕暮れのオレンジ色の空と、パープルの空が見えていたのに…
いつの間に、こんなに真っ暗になったのだろう…
そんな時間を何も考えず、何もせずに過ごしていたのだろうか?
このポケットの中の温かい空間は…
あなたに初めて触れた夜の温もりに似ている。
恋しくて…
逢いたくて…
触れたくて…
今夜の夜景が滲んで見える。
「さ、帰るわ…」
誰に告げた訳でもないけれど…
区切りをつけて、家路を急ぐ。
情けないけど…
こんな自分が嫌いではないの。
いつも…
「音楽と共にあらんことを…」
from「oshiri ' s bar」
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