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普段のオリコンチャートは3位〜4位ぐらいから推定売上枚数が1万台になり、9位や10位では数千枚に落ちていくのですが、今週は4位の作品でも2.8万枚。他の週であれば1位かもしれない数字が続きます。そして、この4位に登場した山下達郎こそが今週の主役。4位の『COME ALONG 3』、10位の『COME ALONG 2』、そして11位に隠れていた『COME ALONG』までを含めて、今週のチャートはさながら「ヤマタツのカム・アロング祭り!」状態なのです。  そもそも『COME ALONG』とは何なのか。これは山下達郎のオリジナルアルバムではなく、1979年にスタッフの発案で作られた販売促進用レコードです。A面は当時のディスコサウンドをDJ風につなぎ、B面は小林克也が陽気にトークしながら山下達郎の曲をノンストップでかけまくる。イメージとしては「ハワイの架空のラジオ・ステーション」。そんな面白い音源が全国レコードショップの店頭で流してもらうための販促グッズとして作られていたのです。  店内で『COME AlONG』を耳にしたファンは、当然「これは何だ?」と騒ぎ出しますし、好評だったため数年後にはシリーズ第二弾も作られました。ファンの声に応えてのちに商品化もされますが、山下達郎本人は長らくこの企画には否定的だったそう。自分の曲は単なるBGMではない、ディスクジョッキーのお喋りにかき消されてしまうものではない、という気持ちが強かったようです。ポップミュージックがまだ十分な市民権を得ていなかった時代。レコードがCDに取って代わられるなんて誰も予想していなかった時代の話です。  最初の『COME ALONG』から33年。いよいよ完成したのがシリーズ第三弾の『COME ALONG 3』。小林克也のご機嫌なDJから始まり、山下達郎の夏の名曲がこれでもかと流れ続ける至福のラジオ・ステーション。コンセプトは前2作と同じですが、大きく違うのは全体を山下達郎本人が監修していること。架空のラジオ番組というコンセプト、DJトークを挟んで曲がどんどん流れていく構成が、「今ならパッケージとして有効」という判断があったのだと思います。  山下達郎は、5年前に初のオールタイム・ベスト『OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜』を出し、大ヒットを記録しています。あの作品を出した背景には「CDというメディアが、そろそろ終焉を迎えそうな雰囲気が出てきた」という時代の読みがありました。レコード会社が健全に動いているうちに、ちゃんとキャリアを総括しておきたい。数年後にはそれさえできなくなるかもしれない。そんな危機感を持っていた彼の動きを倣うように、以降は多くのベテラン・アーティストから3枚組のオールタイム・ベストが届くようになりました。そんな山下達郎が、今回は自ら『COME ALONG』のパッケージ化に動いた。これはとても興味深い流れではないでしょうか。 ストリーミングのプレイリストで音楽を聴いていると、これは限りなくラジオに近い体験だな、と思うことがあります。一曲配信は味気なくても、誰かが意志を持って構成した一時間弱の「番組」にはワクワクがある。レコードがCDに取って代わられ、そのあとCDさえ不要になった、そんな時代の先に残ったのは結局ラジオなのか! そんなことを考えて、驚きなのか嬉しさなのか、自分でも表現できない気持ちになりました。いったい『COME ALONG』は古いのか新しいのか。最初に発案したスタッフの方も、まさか33年後にこの作品がオリコンを騒がせているとは思わなかったことでしょう。
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