男は……苦悶した。
ありもしない脳力を買い被られていた。
結果として、暴露することを選んだ。
すべてが塵になったけれど、無脳さ加減を買ってもらうことにしたのだった。
こんなにも、至上の買い物はしたことがなかった。あくまでも「買われる側」だったのだけど……父でいるよりも、息子とされるよりも、パートナーとして頼られるよりも……。
いちばんの幸せだった。
男の意思のもとに、医師は脳を切除した。
適切な処理を施され……男の希望では、脳を保管することとなっていたが、倉庫の容量は、すなわち、無能な男たちの墓場はすでに、限界をむかえていた。
元「男」の、元「父」の、
元もとは人間だった……彼だった物体は、焼却された。豚の餌にも、ねこのあそび道具となることもなく……青いポリバケツに、残滓は、投げ棄てられた。
棄てたロボットは、それがなんだったのか、認識する脳力を持っていなかった、という。
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