クラッシック音楽になじみのない方も、何となく聞いたことがある作品のプレイリストです。今回はアメリカの作曲家、Leroy Andersonを特集します。彼はアメリカを代表する近現代作曲家の1人で、今年2025年はちょうど彼の没後50年にあたります。彼はよく「アメリカライトクラッシックの巨匠」として紹介されますが、最近はクラッシックの代表的作曲家の1人として取り上げられることが多くなっています。
アンダーソンはバッハやベートーヴェンのように名前が知られている作曲家ではないですが、その作品はほとんどの方が聞いたことがあるものが多く、この「どこかで聞いた」プレイリストシリーズにはピッタリの作曲家だと思います。軽快で誰もが好きになる曲が多いので、是非聞いてみてください。
今回は全てルロイ・アンダーソン作曲の作品なので、作曲者名の記載は省略します。
#1 トランペット吹きの休日(Bugler's Holiday)
1954年の作品。Buglerとは軍隊などにおけるラッパ手を指す用語。明るく軽快な曲で、オリジナルの管弦楽編成から編曲され、吹奏楽などのバンド・コンサートにはなくてはならないスタンダード・ナンバーになっている。日本においては幼稚園や小学校の運動会で、特に徒競走のBGMに使用される定番曲。タイトルには「休日」とあるが、3本のトランペットが休みなく演奏されるということから「トランペット吹きの休日返上」や「休日出勤」などと揶揄されることがある。
#2 Sleigh Ride(そりすべり)
1948年の作品。クリスマスシーズンになると必ず流される定番曲だが、元々はクリスマスイベント用に作曲されたものではない。鈴がたくさんついた楽器「ジングルベル」やムチなど、通常のオーケストラ曲ではあまり見られない楽器を使用し演奏される。曲の最後では、トランペットのバルブを半分押して吹くという特殊奏法によって、馬の鳴き声が表現されている。アンダーソンの曲にはクリスマス時期に流される作品も多い。
#3 The Syncopated Clock (シンコペイテッド・クロック)
1947年の作品。アンダーソンの作品の中でも最も有名な曲の1つ。正確に一定のリズムを刻むはずの時計が、ときおり不規則に時を刻む様子をシンコペーションで表現することによって、おもしろおかしく音楽化した作品。ウッドブロックという打楽器がずっとカチコチと時計の秒針のような音を刻み、目覚まし時計の音も使用されている。日本語の曲名では「愉快な時計」としても知られている。アンダーソンはこの曲をわずか数時間で完成させたとのこと。
#4 Plink, Plank, Plunk! (プリンク・プランク・プルンク)
1951年の作品。タイトルの「Plink」「Plank」はいずれも「物がカタン・ポトンと落ちる音」「楽器をポロンと弾く」という意味があるが、「Plank」にはそういった意味はなく、言葉のごろの良さからつけられたとのこと。この曲は一曲を通じてずっとピチカート奏法で演奏されるため、演奏者は弓を持たずに演奏している。
#5 Blue Tango (ブルー・タンゴ)
1951年の作品。曲のタイトルは、階名の「シ♭」「ミ♭」という、ジャズやブルースでよく用いられる「ブルーノート」が頻繁に使われている事からつけられた。この曲はボストン・ポップス・オーケストラにより紹介されるとすぐに、その華麗な演奏が注目を集めて一躍人気曲となり、ヒットランキングチャートで5週間にわたって1位を記録した。歌のない楽曲で初めてミリオンセラーを記録し、アンダーソンにとっても生涯で最も売れた曲となった。
#6 A Trumpeter's Lullaby (トランペット吹きの子守歌)
1949年の作品。トランペット・ソロ曲だが、バックに管弦楽がついてムードいっぱいに盛り立てている。「子守歌」とはなっているが、大人のための子守歌的な側面が大きく、摩天楼を見上げながら、日々のハードな生活を忘れて疲れた心をいやす、という感じの曲。有名なトランぺッターの「なぜ自分のためのトランペットソロ曲を書かないんだ」というぼやきが作曲のヒントとなったと、アンダーソン自身が回顧している。
#7 The Waltzing Cat (踊る仔猫)
1950年の作品。猫の鳴き声をイメージした演奏が続き、最後には犬にほえられて猫が逃げ出す様子が描かれるというオチまでつく、軽妙で愛らしいコミカルなワルツ。猫の鳴き声はヴァイオリンのポルタメント(滑らかに音程を移行する技法)で表現され、犬の吠える声は楽器ではなく、オーケストラメンバーの誰かが勇気を振り絞って真似をすることが一般的。
#8 The Typewriter (タイプライター)
1950年の作品。アンダーソンの最も有名な作品の一つ。この作品をタイプライターが楽器として用いられるのが特徴で、個人的にはアンダーソン作曲「タイプライター協奏曲」と思っている曲。仕事に追われて忙しいオフィスの状況をユーモラスに描写している。日常生活からタイプライターは姿を消しているが、今なおアンダーソンの人気作品となっている。タイプライターのキーをタイプする音や、行末までタイプしていることを示すベル音、紙を固定するシリンダーを次の行の先頭に戻す時に出る「ザッ」という音が使用されている。
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