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説明文

浪人生活がおもんなさすぎるせいか、すでに高校生活が懐かしく感じて、戻りたくなる。早起きして、まだ日も登っていないうちに玄関を出て、薄暗い坂を駆け下り、電車の出発ギリギリに何とか乗車。座れるわけでもないから立ったまま、切れた息を整える間も無く電車は走り出す。イヤホンを耳につけて、いつものプレイリストを再生する。耳にタコができるほど聴き込んだ曲たちと、見飽きるほど見た車窓から見える朝焼けが今、思い出の中でより一層美しさを増している。あんなに嫌いだった電車通学にも、なぜか愛しさすら覚える。藤の木が立ち並ぶ河川敷、朝特有の冷たい草の匂い、悠々と水面を泳ぐ鴨の群れ、少し離れたところで鳴る汽笛、全部が愛おしい。悴む指も、汗ばむ額も。半年前までこれらは紛れもない現実であったのだけど一夜の夢であったかのような気すらしてくる。目を瞑ってこのプレイリストを流せば、あの時の匂いを鮮明に感じることができる。あの時の僕と今の僕が、連続した存在であるとは、にわかには信じ難いが、この感覚に拍車をかけるのもこのプレイリスト。こういうプレイリストは定期的に作るべきだと思うんだ。
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