終わらせる愛、始める未来
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ママにいつか言われた
あんたって情に厚いのか
淡白なのかわからない
って。
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ママ、それ、どちらも間違いじゃないよ。
両方がわたしの中にあるものだもん。
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それを言い換えるなら
『冷静さと情熱』 なんだとおもう。
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わたしがママから譲り受けた冷静さは、
ママの、見た目のゆるさとは裏腹に、
強く逞しく生きてきて、
でも感情に流されない“現実主義者”な部分。
人と争おうとせず調和を図るけど、
自分の美学や芯の部分は曲げないところ。
そして、本質を見抜く目。
これもママから受け継いだ部分。
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情熱は、パパから。
パパは、本当にわたしとよく似ていて、
嘘がつけず、不器用で誤解されやすい。
だから沢山苦しんだと思う。
自分に正直に生きようとすると
間違ったり、壊したり、沢山するから。
そして、
言葉より背中で示す生き方を選んだ人。
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愛し方はほんとに下手だったけど、
誰よりも誠実な人だったのはわかる。
自分が悪者になって壊してでも
誰かを守ろうとする人。
根っこは“守りたい”という祈りが、
確かにあった。
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昔わたしはパパに言った
わたしは欠けてるけど
それはパパからのものだ、と。
それでもパパは笑ってた。
「欠けてても磨けば光るんや」って。
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ねえ、一度だけわたしに
ポロッと吐いたことがあったよね、
『ママは一緒にいる為なら
なんでもすると言ってくれたけど、
ママにあんな大変な仕事なんて
させたくなかった』って。
きっとほんとはわかってほしかったはずなのに。
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あの一言を、私は信じずに
昔、ママに言われた、
「パパはあんたたちより
他の人が大事だって選んだ」
「だからママはパパと離婚した」
「いくら神の前で誓っても人は離れるもの」
って話を、
捨てられたんだと思い込んでしまったの。
私は家族にすら捨てられるなら
他人なんて信じれるわけないって思った
きっかけだったから、
あのときパパを直接責めてしまったけど、
今のわたしにはパパの
終わらせる愛 がわかるよ。
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わたしも
守りたいと思ったら
同じ愛し方をするだろうから。
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距離は離れていても、物理的に
何かをしてもらったわけでもないけど、
でも全部私の中で生きてる。
わたしが小さい頃から
大人になっても好きだった作品
『美女と野獣』も
『シュレック』も
『タイタニック』も
パパと見たから好きだった。
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わたしが人を外見ではなく中身を見て
愛したいって価値観も
それが根底にあるから。
『タイタニック』が好きだったのは、
愛した人を命懸けで
守ろうとする人の話だから。
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人は作品に自分の気持ちを投影する。
パパが好きな作品は、
パパの純粋さと誠実さ、不器用な愛を
そのまま投影して表したような作品だった。
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わたしがユーモアを好きなのも、
パパがよく笑わせてくれたから。
でも、わたしは当時、
一緒に泣いて欲しかった。
いつも泣いてるのは私だけで、
パパは寂しくないのかって思ってたから。
でも、わたしに笑ってて欲しかったんだよね。
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時間差で、
向けられていた愛情に気がついた時、
崩れ落ちそうだった。
一体どんな気持ちで生きてきたのか、
それを知らずに責めてしまった自分。
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最後に会ったパパの姿は、
昔の面影なんてまるでなくて、
わたしはファミレスで人目をはばからず
震えながら泣いてた。
後悔しながら○年を生きてきたのが
顔、雰囲気、表情、声、全てに現れてた。
あまりに痛ましくて、
目を見ることすらできなかった。
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あんなに「人は外見じゃない」って
パパが作品を通して教えてくれたのに。
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胸が痛くてたまらなくて、
見れない、
直視できないって
それなのに、
ずっとパパの目がわたしを見てるのも
辛かった。
こんなに苦しんでるのに、
それでもなお幸せになれていない
その姿がまた辛かった。
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だからわたしはその時はじめて、
「もう許すから幸せになってほしい」と泣いた。
報われてほしいって。心から祈った。
短い期間でも、わたしには
パパからもらった幸せの思い出が
ちゃんとあるはずなのに。
ある程度の年頃になると、
いつのまにかわたしの中で
パパの記憶は悲しい思い出に
変わってしまっていた。
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でも、もう悲しいお話でなんか
終わらせないからね。
わたしはローズでいるつもりはない。
悲劇のヒロインで残される側、
守られるだけの人間で居たくない。
残していく側になりたい。
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わたしの名前に込められた想い。
パパが「絶対この名前じゃないとダメだ」って
必死に叫んでくれた意味。
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ママが成し遂げられなかった
美容の夢。
パパが成し遂げられなかった
愛と、感性(自由)で生きること。
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2人が生きた時代の壁では叶えられなかった
未完成の夢と愛。
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わたしの代で終わらせるんだから、
絶対、未完で終わらせない。
いつか2人ができなかったことを
娘のわたしが叶えたって見せてあげたい。
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2人が現実に負けて、
信じきれなかった“未来”を、わたしが生きる。
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物理的に距離は置いてるけど、
でも、2人の本質を、わたしは忘れない。
その為にわたしは、
鏡を見ながら、ただ夢を見るだけじゃなく、
しっかり現実も見て、
先見の目を持ちながら
情熱と冷静さで現実を創造してやる。
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